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最終更新:2026年7月20日

 

引越しで退去したあと、敷金が思ったより返ってこない。あるいは、まったく戻ってこない。

 

「これって、普通なの?」「泣き寝入りするしかないの?」と、不安になりますよね。

 

でも、あわてないでください。まず知ってほしいのは、「返ってこない=違法」とは限らない、ということです。

 

近ごろは、敷金ゼロの物件も増え、「退去のときに、まとまった費用を請求された」という声も多く聞かれます。

 

だからこそ今は、「返ってこない」と嘆く前に、何にいくら差し引かれたのかを、正しく確認することが第一歩になっています。

 

敷金・保証金が返ってこないときに、確認すべきことと、相談できる窓口を、順番にお話しします。

 

戻ってきた敷金は、次の引越し代の足しに。まずは料金を見比べて。

 

 

「返ってこない=違法」とは限らない

敷金の明細と契約書を確認する人

 

まず、落ち着いて確認したいことがあります。

 

敷金は、家賃の滞納や、部屋の修繕費などに、あてられるお金です。だから、正当な理由があれば、差し引かれること自体は、おかしなことではありません。

 

問題は、「その差し引きが、正当かどうか」です。

 

だからこそ、最初にやるべきは、「何に、いくら差し引かれたのか」を、はっきりさせることです。「敷金から〇万円引きます」とだけ言われて、うのみにする必要はありません。

 

ちなみに、敷金そのものについても、2020年の民法改正で、定義がはっきりしました。

 

敷金とは、家賃の滞納などにそなえて、借主が貸主に預けておくお金のこと。退去のときは、未払いの家賃などを差し引いた「残り」を、借主に返す、と決められています。

 

(出典:法務省「賃貸借終了時のルールの明確化(敷金)」改正民法)

 

つまり、正当な差し引きがなければ、敷金は戻ってくるのが原則、ということです。

 

その差し引きが正当かどうかを判断するために、知っておきたい大事なルールがあります。

 

通常損耗は、借主が負担しなくていい

ここが、いちばん大切なところです。

 

ふつうに生活していて生じる汚れや傷み。これを「通常損耗」や「経年変化」といいます。これらは、借主(あなた)が修繕費を負担しなくていい、と法律で決まっています。

 

2020年4月に改正された民法で、このルールが、はっきりと明文化されました。通常損耗を借主が負担しなくていいことは第621条に、敷金を返すルールは第622条の2に、それぞれ定められています。

 

(出典:法務省「賃貸借終了時のルールの明確化」/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)

 

たとえば、こういうものは、通常損耗にあたります。

 

  • 家具を置いていた床の、へこみや跡
  • 日光で自然に色あせた壁紙やフローリング
  • テレビや冷蔵庫の裏の、電気ヤケ(黒ずみ)
  • 画びょうやピンの、小さな穴

 

これらは、ふつうに暮らしていれば、どうしても生じるもの。だから、借主が費用を負担する必要はありません。

 

一方で、借主が負担するのは、「故意や不注意による損傷」です。たとえば、タバコのヤニ汚れ、ペットがつけた傷、掃除を怠って広がったカビ、物をぶつけて開けた壁の穴など。これらは、通常の使い方を超えた損傷とされ、借主負担になることがあります。

 

つまり、「経年変化・通常損耗は貸主の負担」「故意・過失は借主の負担」。この線引きが、判断の基本です。

 

ただし、ここで大事な例外があります。それが「特約」です。

 

「クリーニング特約」があると、話は変わる

「通常損耗は借主負担でない」。これが基本ですが、ひとつ、大きな例外があります。

 

それが「特約」です。契約書に、たとえば「退去時のハウスクリーニング費用は借主が負担する」と、はっきり書かれている場合です。

 

この特約は、条件を満たせば、有効とされています。通常損耗であっても、特約で「借主負担」と決めていれば、その費用は差し引かれることがあります。

 

(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」Q&A)

 

ただし、特約なら何でも認められる、というわけではありません。有効とされるには、こんな条件があります。

 

  • 借主が負担する内容や金額が、具体的に示されている
  • 通常損耗も負担させる、という趣旨が明確になっている
  • 借主が、その内容を認識して合意している

 

逆に、金額の記載がなかったり、家賃の何ヶ月分といった暴利的な内容だったりすると、無効と判断されることもあります。

 

だから、まずは自分の契約書に、こうした特約があるかどうかを確認しましょう。特約があるなら、その分は差し引かれる可能性がある、と理解しておくと、あわてずにすみます。

 

敷金が返ってこないときの、確認手順

退去時の立会いで部屋の状態を確認する様子

 

では、実際にどう動けばいいのか。順番に見ていきましょう。

 

  1. 契約書を確認する(敷金額・クリーニング特約・敷引き・原状回復の負担)
  2. 貸主や管理会社に、差し引きの「明細」を請求する(何にいくらか)
  3. その費用が、自分の負担すべきものか確認する(通常損耗か、故意・過失か)
  4. 納得できなければ、証拠を残して話し合う

 

まず、契約書です。敷金の額や、退去時のクリーニング特約、原状回復の負担について、どう書かれているかを確認します。

 

次に、明細の請求です。「クリーニング代」「修繕費」などと、ざっくり言われたら、その内訳を出してもらいましょう。何にいくらかかったのかが分からなければ、正当かどうか判断できません。

 

そして、証拠です。入居時と退去時の部屋の写真、管理会社とのやりとりのメール、修繕費の明細、契約書、立会い時の書類。これらは、あとで交渉するときの、大事な材料になります。

 

とくに、入居したときと、退去するときの写真は強力です。「入居時からあった傷」を、退去時に請求されても、写真があれば示せます。引越しのときは、部屋の状態を写真に残しておくと安心です。

 

もし、明細を見て「これは通常損耗では?」と思う項目があったら、その根拠を、落ち着いて確認しましょう。

 

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には、どんな損耗を、どちらが負担するかの考え方が、細かく示されています。

 

壁紙や床、設備ごとに、負担の目安が整理されているので、自分のケースと照らし合わせる参考になります。

 

感情的にならず、「ガイドラインではこうなっています」と、事実にもとづいて伝えることが、話し合いをスムーズに進めるコツです。

 

「保証金」は、名前で判断しない

ここで、ひとつ注意したいことがあります。「保証金」という言葉です。

 

関西などでは、敷金のかわりに「保証金」という名前で預けることがあります。

 

この保証金、名前は違っても、敷金と同じような性質のこともあれば、契約によっては「敷引き」や「償却」といって、最初から一部が返ってこない取り決めになっていることもあります。

 

だから、「保証金だから全額返ってくるはず」「敷金だから返ってこない」と、名前だけで判断してはいけません。

 

大事なのは、契約書に書かれた「返還の条件」です。敷引きや償却の取り決めがあるなら、その分は返ってこないことになります。契約書を、もう一度よく確認しましょう。

 

話し合いで解決しないときの、相談先

自分で確認して、話し合っても解決しない。そんなときは、ひとりで抱え込まず、専門の窓口に相談しましょう。

 

敷金トラブルの相談先は、主にこの3つです。

 

消費生活センター(消費者ホットライン「188」)
国民生活センター
法テラス(日本司法支援センター)

 

まず気軽に相談できるのが、消費生活センターです。消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、お近くの窓口につながります。敷金トラブルの相談に、乗ってもらえます。

 

(出典:消費者庁 消費者ホットライン/国民生活センター)

 

国民生活センターも、敷金返還や原状回復について、契約内容や国土交通省のガイドラインを確認したうえで、消費生活センターへの相談を案内しています。

 

より専門的な、法律の相談をしたいなら、法テラスがあります。収入などの条件を満たせば、無料で法律相談を受けられます。

 

金額が大きく、話し合いでどうしても解決しない場合は、少額訴訟という手続きもあります。ただ、まずは相談窓口で、自分のケースがどうなのかを整理してもらうのが、いちばんの近道です。

 

ひとつ、知っておきたいのは、国交省のガイドラインは、それ自体が法律というわけではない、という点です。

 

原状回復を考えるうえで、とても重要な基準ではありますが、最終的には、契約の内容や、個別の事情も合わせて判断されます。だからこそ、自分だけで抱え込まず、専門の窓口に相談するのが安心です。

 

相談するときは、手元に材料をそろえておくと、話が早く進みます。契約書、差し引きの明細、部屋の写真、管理会社とのやりとり。

 

これらを用意してから相談すると、窓口の担当者も、具体的なアドバイスをしやすくなります。

 

敷金が戻れば、引越し代の足しになる

敷金は、正しく確認すれば、思ったより多く戻ってくることもあります。

 

そして、戻ってきた敷金は、次の新生活の、大切な資金になります。

 

とくに、引越しには何かとお金がかかります。戻ってきた敷金を、次の引越し費用にあてられれば、家計もずいぶん助かります。

 

その引越し費用も、業者によって大きく変わります。同じ荷物でも、数万円の差が出ることは、めずらしくありません。

 

敷金をしっかり取り戻したうえで、引越し代も抑えるには、何社かで見積もりを取って、料金を見比べるのがいちばんです。

 

次の引越しが決まったら、まず料金を比べて、かしこく引越しましょう。

 

引越し料金を、まとめて見比べたい方はこちら。

 

まとめ

敷金・保証金が返ってこないときの、ポイントをまとめます。

 

  • 「返ってこない=違法」とは限らない。まず「何にいくら」を確認する
  • 通常損耗・経年変化は、借主の負担ではない(民法・国交省ガイドライン)
  • 借主が負担するのは、故意・過失による損傷
  • 契約書の確認→明細の請求→証拠を残す、の順で動く
  • 「保証金」も名前でなく、契約書の返還条件で判断する
  • 解決しなければ、消費生活センター(188)・国民生活センター・法テラスへ

 

敷金は、正しい知識があれば、取り戻せることも多いお金です。あきらめず、まずは冷静に確認するところから、始めてみてくださいね。

 

※本サイトに掲載している料金・相場は特定時点の参考値です。実際の料金は荷物量・移動距離・時期・作業条件によって変わります。正確な金額は各引越し業者の公式サイトまたは見積もりで必ずご確認ください。

 

出典・参考リンク

  • 法務省「賃貸借終了時のルールの明確化(敷金・原状回復)改正民法」
  • 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
  • 消費者庁 消費者ホットライン「188」/国民生活センター(敷金返還・原状回復の相談)
  • 法テラス(日本司法支援センター)無料法律相談

 

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