最終更新:2026年7月13日
引越しの見積もりで「今ここで内金を入れてもらえれば、この料金でお取りしておきますよ」と言われて、財布を出すべきか迷っていませんか。
結論から言うと、その場で払う必要はありません。
国土交通省の標準引越運送約款では、引越し料金は作業が完了してから払うのが原則とされています。
内金・予約金・予約確保料・手配手数料・着手金――どの名目で求められても、応じるかどうかを決めるのは利用者です。
契約内容を書面で確認したうえで判断できますし、不安ならその場で決めず、他社にも見積もりを取ってからで構いません。
この記事では、断る根拠・その場で使える断り文句・払ってしまった後の対処法までまとめました。
前払いを請求されたときの断り文句と状況チェック
まず、その場で使える言い方と、今の状況の確認から始めましょう。
【コピペで使える断り文句】
「他社とも比較検討したいため、本日中の前払いには応じません。
正式な契約内容を書面で確認してから判断します。」
今の状況を確認しよう——判断フロー
引越し業者に内金・予約金などの前払いを請求された
▼
| Q1. まだ支払っていませんか? | |
|---|---|
|
YES(まだ支払っていない) 前払いに応じる必要はありません。 ↑「コピペで使える断り文句」を確認する |
NO(もう支払ってしまった) ▼ Q2へ進んでください |
▼(支払ってしまった方)
| Q2. 段ボールなど現物を受け取りましたか? | |
|---|---|
|
NO(現金のみ) 返金を求める方法があります。まず業者に直接申し出てみましょう。応じてもらえない場合は188(消費者ホットライン)に相談してください |
YES(段ボール等を受け取った) 現金の内金とは扱いが変わる場合があります。自己判断せず188または最寄りの消費生活センターに相談してください |
断る権利の根拠——約款と2025年改正が後ろ盾になる

前払いを求められて不安になっても、慌てる必要はありません。
その判断の根拠となるのが、標準引越運送約款と2025年4月の制度改正です。
標準引越運送約款「作業完了後払いの原則」
国土交通省が定めた標準引越運送約款(令和7年国土交通省告示第193号・2025年4月1日施行)では、引越し料金の支払いは作業完了後が原則とされています。
また、同約款では見積もり時に内金や手付金を請求しないこととされています。
つまり、「内金を支払わないと見積もりは出せない」「トラック確保のため予約金が必要」といった説明を受けた場合は、契約内容や支払い条件を慎重に確認した方がよいでしょう。
出典:国土交通省 標準引越運送約款
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000009.html
2025年4月改正:運送引受書の交付が義務化された
2025年4月1日の改正で、引越し業者は依頼を受けたときに運送引受書(書面)を交付する義務が生じました。
書面の説明がないまま支払いを求められた場合は、内容を十分に確認してから判断することをおすすめします。
「書面を先にください」と伝えることで、不当な請求を牽制する材料にもなります。
なかには「うちは標準約款ではなく独自の約款を使っている」と説明する業者もいます。
ただ、独自の約款で支払い条件が不透明な業者に大切な荷物を預けること自体、後からトラブルになるリスクが高まります。
今すぐ断る方法
「断ったら嫌がらせされない?」——心理的ハードルへの回答
前払いを断ったことで、引越し当日に荷物を雑に扱われるのではと不安になる方もいます。
でも、正式な引越し事業者であれば、支払い条件の確認を理由に不利益な対応をすることは通常ありません。
こうした確認に丁寧に対応してくれる業者であれば、安心して依頼しやすいでしょう。
逆に言えば、断っただけで態度が急変するような業者は、最初から依頼しない方が安全です。
実際の現場では、こんな言い方をされることがあります。
「今ここで5,000円入れてもらえれば、この割引料金でトラックをキープできますよ」
「内金をいただかないと、正式な見積もりはお出しできないんです」
「予約確保料として1万円だけ。キャンセルしても返金しますから」
「繁忙期はどこの業者さんも予約金をもらってますよ」
こうした説明を受けても、その場で支払う必要はありません。
断る際の流れと伝え方
「正式な契約書(運送引受書)を先にいただいてから、支払い条件を確認させてください」と伝えましょう。
「他社とも比較検討したいため、本日中の前払いには応じません。
正式な契約内容を書面で確認してから判断します。」
見積もりその場での即決を急かしてくる業者には、「一晩考えます」と言い、その日は決めないことをおすすめします。
それでも引き下がらない業者への対応
「払わないなら見積もりを出せない」「トラックが埋まってしまう」などと言って引き下がらない場合は、その業者との交渉をいったん打ち切ることが現実的な選択肢です。
このような業者の場合、契約条件や追加料金の有無を特に慎重に確認した方がよいでしょう。
断った後に業者がキャンセル料を請求してきた場合の対処法はこちら
払ってしまった後の対処法・相談窓口
すでに内金や予約金を支払ってしまった場合でも、返金を求める手段が残っています。
返金交渉の流れ
まず業者に直接申し出る
「標準引越運送約款では見積もり時の内金・手付金の請求は認められていません。
支払い分の返金をお願いします」と伝えてみてください。
消費生活センターでも、まずは業者へ返金を求めるよう案内している事例があります。
業者が応じない場合は相談窓口へ
直接交渉でらちが明かない場合は、下記の相談窓口に連絡してください。
専門の相談員が対応方法を教えてくれます。
相談窓口
| 窓口 | 電話番号 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 消費者ホットライン | 188(いやや) | 最寄りの消費生活センターにつながる。返金交渉のアドバイスが得られる |
| 国土交通省 自動車局安全政策課 | 03-5925-8981 | 引越し業者に関するトラブル相談 |
実際にあったトラブル事例
「自分の状況と似ているか確認したい」という方のために、実際の事例を紹介します。
引越し当日に追加料金を請求されるトラブルも起きています → 追加請求トラブルの対処法
事例1:仮契約時に内金1万円→見積もりが2万円増額→段ボール代まで請求された

初めての引越しで地元業者に見積もりを依頼。
思ったより安かったので、仮契約を結びました。
担当者から「アパートと同じで仮契約時には内金が必要です」と言われ、現金1万円を支払いました。
さらに「仮契約者へのサービス」として段ボール30箱を置いていきました。
2週間後、本見積もりが最初より2万円近く高くなっていてびっくり。
「家電が多かった」「大きいトラックが必要」と説明されました。
断ると「内金1万円は返せない。
段ボール代1万2,000円も払ってほしい」と言われました。
段ボールを返すと伝えても「一度手渡したものは他の客に使いまわしできない」と一点張りで帰ってもらえません。
最終的に「内金と段ボール代の合計2万2,000円が発生するため、契約した方がよい」と言われ、高い見積もりのままやむなく本契約することになりました。
他の業者に頼んでいれば、もっと安く引越しできたはずだったと後悔しています。
事例2:繁忙期を理由に「見積もり前に予約金5,000円」→他の業者では一切請求なし
3月末の引越しに備え、複数社から見積もりを取ることにしました。
最初に来てもらった業者が荷物確認後、日程を確認した直後に「トラック確保のため予約金5,000円を今すぐ現金でお支払いください」と言ってきました。
この時点でまだ見積もり金額を教えてもらっていません。
断ると「3〜4月は引越しが多くトラックが足りなくなる。
まずトラックを確保してから見積もりを出す決まりになっている。
今払わなければ見積もりを出せない」と言われました。
しかもその予約金は、契約してもしなくても返金しないと言います。
仕方なく5,000円を支払いましたが、その後に見積もりを取った2社では予約金を一切請求されませんでした。
「引越し料金は全て当日払いです」と説明されました。
結局2番目の業者に依頼しましたが、払った5,000円は返ってきていません。
段ボール・梱包資材を受け取ってしまった場合
「サービスです」と言われて段ボールを受け取った場合は、内金や予約金とは別に考える必要があります。
東京都消費生活センターの2025年3月の事例によると、「引越業者がすでに実施したサービスや引き渡した段ボール代等があった場合、その費用については、解約を申し出ても請求されることがある」と指摘されています。
つまり、現物サービスを受け取った後に業者を変えると、その費用を請求されるケースがあります。
「サービスだと聞いていた」という主張は通る場合もありますが、状況によって判断が分かれます。
段ボールを受け取ってしまったら
「業者の説明ではサービスだと聞いていた」という事実を伝えましょう。
費用を請求されたら、消費者ホットライン(188)に相談してください。
自己判断でお金を払う前に、まず相談することをおすすめします。
「絶対に払わなくていい」とは言い切れませんが、払う前にまず相談することが重要です。
こういう業者には最初から頼まないのが一番
見積もり前に確認すべき3つのポイント
「支払いはいつになりますか?」と最初に聞きましょう。
「作業完了後のお支払いです」と説明してくれる業者であれば、比較的安心して依頼しやすいでしょう。
2025年4月の改正で書面交付が義務化されています。
「書面を先にいただけますか?」と聞いて、快く対応してくれる業者を選びましょう。
「今日中に決めれば特別価格」「日程が埋まってしまう」というプレッシャーをかけてくる業者は、後から追加請求してくるリスクがあります。
一括見積もりで複数社を比較するのが有効な理由
複数社に声をかけると、業者ごとの対応の差がすぐに見えてきます。
他社では請求しないものを求めてくる業者を、比較することで見抜けます。
よくある質問
Q1. 引越し費用は前払いが必要ですか?
A. 標準引越運送約款では、引越し料金は作業完了後払いが原則です。標準引越運送約款を採用している一般的な引越し業者であれば、見積もり前・契約前の前払いに応じる必要は通常ありません。
Q2. 内金を払う前に契約書を交わすべきでは?
A. 2025年4月の改正で、業者は運送引受書(書面)を依頼を受けた時点で交付する義務があります。書面も渡さずにお金を求めてくる業者には、断る権利があります。
Q3. 見積もり時にお金を払わないといけませんか?
A. 見積もり自体にお金はかからないのが通常です。見積もり料を求める業者は、契約を見送ることも選択肢の一つです。
Q4. 前払いを断ったらキャンセル扱いになりますか?
A. 見積もり前・正式な契約前であれば、キャンセル料は発生しません。(引越しのキャンセル料についてはこちらをご参照ください)
Q5. 前払いを求められて困っています。どうすればいいですか?
A. まず断ってください。「他社とも比較したいため前払いには応じません」と伝えれば問題ありません。解決しない場合は消費者ホットライン(188)にご相談ください。
Q6. 予約金を払うのは違法ですか?
A. 直ちに違法とはいえません。ただし、標準引越運送約款では見積もり時の内金や手付金を請求しないこととされているため、前払いに応じる必要はありません。
Q7. 大手引越し業者も前払いを求めますか?
A. 大手業者は一般的に当日払いが原則です。前払いを求めてくる場合は、内容をよく確認することをおすすめします。
Q8. クレジットカード決済は前払いになりますか?
A. 作業完了後に端末で決済する方法であれば前払いにはなりません。契約前にカード番号の提供を求められる場合は確認が必要です。
Q9. 支払ったお金は返金してもらえますか?
A. 正当な理由なく徴収された場合、返金を求められる可能性があります。まず業者に申し出て、応じてもらえない場合は消費者ホットライン(188)にご相談ください。
Q10. 繁忙期の予約金は本当に必要ですか?
A. 繁忙期であっても、引越し料金は作業完了後払いが原則です。「3月だから予約金が必要」という説明は、約款上の根拠がありません。
まとめ
引越し業者への前払いは、標準引越運送約款(令和7年国土交通省告示第193号)で原則として認められていません。
「内金」「予約金」「仮押さえ料」「予約確保料」「手配手数料」「着手金」――どの名目で前払いを求められても、応じるかどうかは利用者が判断できます。
「断ったら嫌がらせされるかも」という心配は、正式な業者には当てはまりません。
すでに支払ってしまった場合も、返金交渉の余地があります。
消費者ホットライン(188)に相談してください。
なお、段ボールなど現物を受け取った場合は、現金の内金とは扱いが異なる可能性があります。
この場合も188に相談してから判断してください。
※本サイトに掲載している料金・相場は特定時点の参考値です。実際の料金は荷物量・移動距離・時期・作業条件によって変わります。正確な金額は各引越し業者の公式サイトまたは見積もりで必ずご確認ください。
出典
- 国土交通省 標準引越運送約款(令和7年国土交通省告示第193号・2025年4月1日施行)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000009.html - 東京都消費生活センター 2025年3月注意喚起
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/sodan/kinkyu/20250304-2.html - 国民生活センター FAQ
https://www.faq.kokusen.go.jp/category/show/161
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