引越しで高級家具や美術品を運ぶときは、「どこまで補償されるのか」「専門業者に依頼すべきか」で迷う方も多いでしょう。
実は引越し業者の補償には上限があり、品物によっては保険や専門業者の利用を検討した方がよい場合があります。
この記事では、高級品を安全に運ぶための判断基準をわかりやすく解説します。
高級品を引越し業者に依頼する方法

メリット・デメリット
メリットは、費用と手間を抑えられること。
他の荷物と一緒に運んでもらえるので、引越し料金に上乗せされる分は比較的少なめです。見積もりも1回で済むので、スケジュール的にも楽です。
デメリットは、専門業者ほどの技術・補償は期待できないこと。
高級品の扱いに慣れているスタッフが必ずいるわけではないので、品物の状態や業者によって仕上がりにバラつきがあります。形状が複雑なものや、特別な梱包が必要なものは断られることもあります。
引越し業者に依頼する場合は、早めに以下の2点を確認しておきましょう。
- そもそも輸送してもらえるかどうか
- 輸送できる場合、どのような方法で運ぶか
引越し業者の梱包オプションを使う場合は、大切な品物であることを明確に伝えてください。専門業者の梱包と同レベルを期待するのは難しいので、梱包が不十分だった場合の対応についても確認しておくと安心です。
20万円の壁|引越し業者の補償はどこまでカバーできるか

引越し業者は、荷物補償のための保険に義務として加入しています。補償の対象になるのは、見積もり時に申告済みの高級品です。
引越し業者の補償額は業者や契約内容によって異なります。ただし、高額品になると補償だけでは十分でないケースもあります。
目安として「1品あたり20万円程度」と言われることが多く、たとえば50万円のアンティークテーブルが壊れた場合、差額は自己負担になる可能性があります。
ただし上限額は業者や契約内容によって異なります。見積もり時に必ず確認してください。
高額な品物の場合、業者の補償では十分カバーできないケースもあります。見積もりの段階で「この品物の補償はどこまでカバーできますか?」と確認しておきましょう。補償が足りないと感じたら、引越荷物運送保険の利用か専門業者への依頼を検討してみてください。
高級品がある場合は、補償内容や対応可否が業者によって異なります。契約後に「運べません」と言われないためにも、見積もりの段階で複数社に確認しておきましょう。
なお、以下は補償対象外です。
- 見積もり時に申告していなかった高級品
- 依頼人自身が梱包したものの破損
- トラックが第三者に追突された(もらい事故)
- 天災による破損
引越荷物運送保険の選び方

高級品があると伝えると「保険はどうされますか?」と聞かれることがあります。聞かれない場合は「引越荷物運送保険に入れますか?」と自分から確認してみてください。
2種類の保険を混同しないようにしましょう。
| 保険の種類 | 誰が掛けるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 引越荷物運送保険 | 依頼人(あなた) | 万が一の時の対応がスムーズ。見積もり時に申し込む必要あり |
| 運送業者貨物賠償責任保険 | 業者 | 業者が義務として加入。補償の範囲や上限は業者・契約内容によって異なる |
「引越荷物運送保険」は依頼人自身がかける保険です。業者の補償上限を超える高級品がある場合は、この保険で不足分をカバーするのが現実的な方法です。
保険料は品物の時価額に応じて計算されます。具体的な金額は見積もり時に業者へ確認してください。
どの範囲まで補償するかによって保険金額が変わってきます。引越し後の申し込みはできないので、見積もりの段階で相談しておきましょう。
業者の補償だけでは不安な場合は、この保険で不足分をカバーできます。
高級品を専門業者に依頼する方法

メリット・デメリット
メリットは、高級品の輸送を安心して任せられること。
専門業者は品物の特性に合わせた梱包・輸送が得意です。絵画なら専用ケース、ピアノなら養生から吊り上げまで、品物の種類ごとに対応方法が確立されています。高額な一点物でも、それに見合った補償をかけることができます。
デメリットは、費用と手間が余計にかかること。
手配先が増えるため、引越し業者とは別に日程調整が必要です。費用も品物1点ごとに発生するので、複数ある場合はかなりの金額になります。
専門業者の料金目安
料金は品物の種類・サイズ・距離によって大きく変わります。
※以下はあくまで一般的な目安です。実際の料金は業者・条件によって大きく異なります。正確な金額は見積もりで確認してください。
美術品(絵画・彫刻)
| 条件 | 料金目安 |
|---|---|
| 小型絵画(3辺200cm以内)東京〜大阪 | 約15,000円〜 |
| 油絵1点(主要都市間・約500km)梱包・保険込み | 50,000〜55,000円 |
| 彫刻(小型)主要都市間 ※保険料別 | 35,000〜45,000円 |
ピアノ
| 種類・条件 | 料金目安 |
|---|---|
| アップライトピアノ(同一市区町村内10km以内) | 15,000〜25,000円 |
| アップライトピアノ(長距離300km以上) | 60,000〜100,000円 |
| グランドピアノ(同一市区町村内) | 30,000〜50,000円 |
| グランドピアノ(長距離300km以上) | 100,000〜180,000円 |
| 階段・クレーン作業あり | +5,000〜50,000円(フロア・状況による) |
高級家具・アンティーク(200km以内)
| 家具の大きさ(3辺合計) | 料金目安 |
|---|---|
| 〜200cm | 8,000〜9,000円 |
| 201〜300cm | 12,000〜13,000円 |
| 301〜400cm | 15,000〜16,000円 |
| 401〜500cm | 18,000〜19,000円 |
| 501cm〜 | 20,000〜21,000円 |
特別梱包や高額保険が必要な場合は、これらに別途費用が加算されます。複数社に見積もりを取って比較するのが確実です。
ヤマト運輸や日本通運など、美術品輸送を扱う業者があります。個人利用の可否やサービス内容は変更される場合があるため、最新情報を各社に確認してください。品物の種類や地域によって得意分野が違うので、問い合わせ時に取り扱い実績も確認してみてください。
どちらに頼む?判断フローチャートと比較表
どちらの業者に頼めばいいか迷ったときは、以下の手順で考えてみてください。
判断フローチャート
【スタート】その品物は一点物か?(壊れたとき代わりが手に入らない)
│
├─ YES ──→ 専門業者に依頼
│
└─ NO ──→ 買い直し・修理費用が業者の補償範囲を超えるか?
│
├─ YES ──→ 引越荷物運送保険に加入 or 専門業者に依頼
│
└─ NO ──→ 引越し業者に事前申告して依頼でOK
│
(補足)引越し業者に断られた場合 ──→ 専門業者に依頼
比較表
| 引越し業者 | 専門業者 | |
|---|---|---|
| 費用 | 引越し料金に上乗せ(比較的安い) | 品物ごとに別途料金(高め) |
| 補償 | 20万円程度が目安と言われるが業者による(見積もりで確認) | 品物の価値に応じた高額補償が可能 |
| 手続き | 見積もり1回で完結 | 引越しとは別に手配が必要 |
| スケジュール | 引越しと同日 | 引越しとは別日程になることも |
| 向いているもの | 買い直しができる・業者の補償範囲内で収まるもの | 一点物・高額品・業者に断られたもの |
→ ピアノの引越しについて詳しくは「ピアノの引越しにかかる費用を抑えて安全に運ぶコツ!」もご参考ください。
→ 荷物に傷がついた場合は「引越しで荷物に傷がついたときの対処法」も確認しておきましょう。
→ ダンボールの返却トラブルについては「キャンセルしたら送料請求?引越しダンボールの返却費用と対処法」で詳しく解説しています。
引越し当日に自分で持つべき「貴重品」リスト
絶対に自分で持ち運ぶべきもの
引越しで忙しくなると、つい「全部業者に任せてしまおう」と思いがちです。でも、財布の中身や通帳だけは別の話です。
以下のものは、業者に預けず必ず自分で持ち歩いてください。
- 現金・クレジットカード・キャッシュカード
- 預金通帳
- 印鑑(実印・銀行印)
- パスポート・マイナンバーカード・運転免許証
- 貴金属・宝石・指輪・ネックレス
- 保険証・薬・お薬手帳
- スマートフォン・充電器
引越し当日は、これらをバッグやウエストポーチにまとめて肌身離さず持ち歩くのが基本です。
なぜ業者が運べないのか(標準引越運送約款 第4条第2項)
「別に業者に任せてもいいんじゃないか」と思う人もいると思います。でも、これは標準引越運送約款で定められています。
国土交通省が定めた「標準引越運送約款」の第4条第2項に、業者が引き受けを断れる荷物として以下がはっきり書かれています。
現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑等 荷送人において携帯することのできる貴重品
要するに「自分で持ち歩けるものは自分で持ってください」という決まりです。
さらに重要なのが第24条の免責規定です。申告なしに貴重品を荷物に混ぜていた場合、補償対象外になる可能性があります。紛失・盗難が起きても「事前に知らされていなかったので補償できない」ということになってしまいます。
業者に任せてOKなものと、任せてはいけないものの違い
| 区分 | 具体例 | 取り扱い |
|---|---|---|
| 自分で持つべきもの | 現金・通帳・印鑑・パスポート・貴金属・薬 | 業者への引き渡しNG。手荷物として持ち歩く |
| 事前申告すれば依頼できるもの | 高級家具・美術品・骨董品・ピアノ・楽器 | 見積もり段階での申告が必須 |
| 通常どおり依頼できるもの | 一般的な家具・家電・衣類など | 通常の引越し対応でOK |
「事前申告すれば依頼できるもの」については、必ず見積もりの段階で業者に伝えてください。当日いきなり「これも一緒に運んでください」と言っても、断られるケースがあります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 現金や通帳は引越し業者に任せても大丈夫?
任せないでください。標準引越運送約款の第4条第2項で、現金・通帳・印鑑・貴金属は業者が引き受けを断れる対象として明記されています。申告なしに荷物に混ぜた場合、紛失・盗難が起きても補償されません。当日は必ず手荷物として持ち歩いてください。
Q2. 引越し業者の補償は全額出るの?
全額ではない場合があります。補償内容や上限額は業者や契約内容によって異なりますが、1品あたり20万円程度が目安と言われることが多いです。高額品がある場合は見積もり時に「この品物の補償はどこまでカバーできますか?」と確認し、不足する場合は引越荷物運送保険(依頼人自身がかける保険)か専門業者の利用を検討してください。
Q3. 引越し業者に断られたらどうすればいい?
専門業者に問い合わせてください。形状が特殊なものや重量・サイズの大きい品物は、引越し業者の技術・設備では対応できないことがあります。専門業者なら、引越しとは別日程になりますが安全に運んでもらえます。
Q4. 引越荷物運送保険はいつ申し込む?
見積もりの段階、遅くとも引越し契約時までに申し込む必要があります。引越し後の加入はできません。高額品がある場合は「引越荷物運送保険に入れますか?」と早めに確認しておきましょう。
Q5. 専門業者の料金はどれくらいかかる?
品物・距離によって変わります。以下はごく大まかな参考値です。実際の金額は業者・条件によって大きく異なります。
- 小型絵画(東京〜大阪):15,000円〜(目安)
- アップライトピアノ(長距離):60,000〜100,000円(目安)
- グランドピアノ(長距離):100,000〜180,000円(目安)
- 高級家具(200km以内):8,000〜21,000円程度(目安)
梱包グレードや保険の内容によっても変わるので、複数社に見積もりを取って比較するのが確実です。
Q6. 貴重品を荷物に入れてしまった場合はどうすればいい?
荷物の積み込みが始まる前なら、すぐに業者に伝えて取り出してもらってください。「通帳を入れてしまったので取り出してほしい」と正直に言えば対応してくれます。
すでに積み込みが終わっている場合は「その荷物に貴重品が入っているので、到着後すぐに開けさせてほしい」と伝えましょう。申告なしに入れていた貴重品は補償の対象外になってしまうので、気づいた時点でできるだけ早く業者に知らせることが大切です。
Q7. ピアノや絵画など、品物によって対応は変わるの?
品物によって、業者の選び方や注意点が変わります。
- ピアノ:引越し業者のピアノ輸送オプションか、ピアノ専門の輸送業者に依頼。クレーン作業が必要な場合は費用が大きく上がります。(→ ピアノの引越しにかかる費用を抑えて安全に運ぶコツ!)
- 絵画・美術品:専門の美術輸送業者に依頼。ヤマト運輸や日本通運など美術品輸送を扱う業者がありますが、個人利用の可否やサービス内容は変更される場合があるため、最新情報を各社に確認してください。
- 骨董品・陶器:専門梱包が必要なため、取り扱い実績のある業者を選んでください。
- 楽器(ギター・バイオリン等):メーカーや楽器店が推奨する業者がある場合は、そちらに相談するのも一つの方法です。
Q8. 骨董品や美術品の価値はどうやって証明するの?
補償を受ける際は、購入時の領収書や鑑定書、査定書などが必要になる場合があります。高額品は事前に写真を撮り、価値がわかる資料を保管しておきましょう。
高級品がある場合、補償内容や対応可否は業者によって異なります。契約後に「運べません」と言われないためにも、見積もりの段階で複数社に確認しておきましょう。
参考ページ
ピアノの引越しにかかる費用を抑えて運ぶには引越し業者のオプションを利用!
引越しで見積もりの時に業者が置いていったダンボールでトラブルになった!?


